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インペリアル・イースターエッグ
ロマノフ王朝のアレクサンドル3世とニコライ2世が妻や母に贈るために作ったイースター・エッグは黄金と宝石(主にダイヤ)がふんだんにちりばめらている。
その独創性で気品溢れる美しさ、そして精緻を凝らした仕掛けとあわせ、歴史上屈指の工芸美術品として名高い。
インペリアル・イースター・エッグ、ロイヤル・イースター・エッグとも呼ばれています。
ニコライ二世が、妻や母に送るプレゼントとして、1885年〜1916年の間に56個、作られました。
現在は44個が捜し出され、確認されています。
インペリアル・イースター・エッグの特徴は華麗さだけではなく、精巧な仕掛けが大きな特徴です。
最初に作られたものは七宝の白い卵の殻の中から黄金のめんどりが卵の中から出てくるというシンプルなものでしたが、次第に豪華な飾りと複雑な仕掛けが施されるようになりました。
製作者は天才的デザイナーで宮廷宝石職人だったカール・ファベルジェ。
ロマノフ家のもつ財力とファベルジェの才能によって、ロシア最高の宝飾品インペリアル・イースター・エッグが生まれたのです。
(ファベルジェとは19世紀末から20世紀初頭にかけてロシア王室ご用達となった宝石商。
ファベルジェがロシア王室の注文を受けて製作された数多くの宝飾品や飾り物、文房具、時計等、膨大な工芸品が残されています。)
イギリス王室に3個、モナコ王室とエジプト王室に各1個が売却され、さらにロシア革命でロマノフ朝が崩壊するとイースター・エッグは世界中に拡散されました。
世界で最も多く保持しているのがニューヨークのフォーブス・ギャラリーで全部で12個所有しています。(因みに、ファベルジェ作品を最も多く所有しているのはイギリスのエリザベス女王。)
その他に、クレムリン博物館武器庫に10個、スイスなどで所有されています。
2004年4月20日と21日にニューヨークのサザビーズにて9個の卵を含む180点余りのファベルジェの作品(総額で100億円を超えるといわれた)がオークションにかけられることになっていました。
取引の行方に注目が集まっていましたが、2月4日、サザビーズはオークションが中止となったことを発表しました。
出品予定の全作品をロシアの新興財閥ヴィクトール・ヴェクセリヴェルグが一括購入することになったためでした。
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イースターエッグ・リスト
ファベルジェの作品(イースターエッグ)の製作年・製作時の価格・2004年2月時点での所在・名称・支払い額(ルーブル)・現在の所有者
1885 Hen(めんどり) 4,151 フォーブス家(1978)
1886 Hen Egg(サファイア ペンダント付・籠の中のめんどり) 2,986 1922年以降行方不明
1886 Resurrection(キリスト復活) 不明 フォーブス家
1887 Blue Enamel(青の七宝) 不明 Starvos Niarchosコレクション パリ
1887 Blue Serpent Clock(青い蛇の時計) 2,160 Monaco レイニエIII世
1888 Cherub with Chariot(戦車に乗るケルビム) 2,100 A.Hammerが売却 現在は不明
1888 時計を持つ天使 不明 行方不明
1889 Necessaire 【必需品、道具箱の意味) 1,900 行方不明
1889 Pearl (真珠) 不明 行方不明
1890 Emerald (エメラルド) 不明 行方不明
1890 Spring Flower(春の花) 不明 フォーヴス家
1891 Azov(巡洋艦アゾフ号) 4,500 モスクワ Kremlin博物館
1892 Twelve Monograms(12の組み合わせ文字) 4,500 ワシントンD.C. Hillwood博物館
1893 Caucasus(コーカサス) 5,200 ニューオルリンズ美術館
1894 Renaissance(ルネッサンス) 4,750 フォーブス家
1895 Danish Palaces(デンマークの宮殿) 4,260 ニューオルリンズ美術館
1895 Rosebud(薔薇の蕾) 3,250 フォーヴス家(1985)
1896 AlexanderIII(アレクサンドルIII世) 3,575 行方不明
1896 Revolving Miniatures(回るミニチュア) 6,750 ヴァージニア美術館 Richmond
1897 Mauve Enamel(モーヴ色の七宝) 3,250 フォーブス家(1978)
1897 Coronation(戴冠式) 5,500 フォーブス家(1979)
1898 Pelican(ペリカン) 3,600 ヴァージニア美術館
1898 Lilies of the Valley(すずらん) 6,700 フォーヴス家(1979年216万ドルで購入)
1899 Pansy(三色菫) 5,600 個人蔵 アメリカ
1899 Bouquet of Lilies Clock(百合の花束時計) 6,750 モスクワ Kremlin博物館
1900 Cockerel(鳩時計) 7,000 フォーブス家(1979年1,905,200ドルで購入)
1900 Trans Siberian Railway(シベリア横断鉄道) 7,000 モスクワ Kremlin博物館
1901 Gatchina Palace(ガチーナ宮殿) 5,000 メリーランド州 Baltimore Walter's Art Gallery
1901 Basket of Flowers(花篭) 6,850 英国王室
1902 Empire Nephrite(ネフライトの帝国) 6,000 行方不明
1902 Clover(クローヴァー) 8,750 モスクワ Kremlin博物館
1903 Danish Jubilee(デンマーク50年祭) 7,535 革命後行方不明
1903 Peter the Great(ピョートル大帝) 9,760 ヴァージニア美術館 Richmond
1904 Cathedral Ouspensky(ウスペンスキー寺院) 不明 モスクワ Kremlin博物館
1904 Alexandre III Commemorative(アレクサンドルIII世記念) 11,200 モスクワ Kremlin博物館
1905 Colonnade(柱廊時計) 11,600 英国王室
1906 Swan(白鳥) 7,200 時計博物館 Le Locle スイス
1906 Kremlin(クレムリン宮殿) 11,800 モスクワ Kremlin博物館
1907 Cradle with Garlands(花冠付の揺りかご) 9,700 個人蔵
1907 Rose Trellis(薔薇の格子) 8,300 メリーランド州 Baltimore Water's Art Gallery
1908 Peacock(孔雀) 8,300 時計博物館 Le Locle スイス
1908 Alexander Palace(アレクサンドル宮殿) 12,300 モスクワ Kremlin博物館
1909 Standard(皇室のヨットスタンダード号) 12,400 モスクワ Kremlin博物館
1910 Alexander III Equestrian
(アレクサンドルIII世乗馬像) 14,700 モスクワ Kremlin博物館
1910 Love Trophy (愛のトロフィー) 不明 アメリカ 個人蔵
1911 Bay Tree(オレンジの樹) 12,800 フォーブス家(1966年35,000ドルで購入)
1911 15th Anniversary 16,600 フォーブス家(1966)
1912 Napoleonic(ナポレオン様式の) 不明 ニューオルリンズ美術館 Geddings Gray財団
1912 Tsarevich(ツァレヴィッチ) 不明 ヴァージニア美術館 Richmond
1913 Winter(冬) 24,600 個人蔵(1994年 560万ドルで取引)
1913 Romanov Tercentenary(ロマノフ家300周年記念) 21,300 モスクワ Kremlin博物館
1914 Mozaic(モザイク) 不明 英国王室
1914 Grisaille(グリザイユ) 不明 Hillwood博物館 ワシントンD.C.
1915 Red Cross with Imperial Portraits
(皇帝の肖像付赤十字) 不明 ヴァージニア美術館 Richmond
1915 Red Cross with Tripitych 不明 クリーヴランド美術館 Ohio
1916 Order of St. George(聖ジョージ) 不明 フォーヴス家
1916 Steel Military(鉄の軍隊) 不明 モスクワ Kremlin博物館
* 1885年当時の貨幣価値は1ルーブルが1912年当時の0.51ドルに相当。当時の1ドルは1997年当時の16ドルに相当と計算
したがって当時の1ルーブルは1997年の8ドルに相当。
** 資料によっては製作年代の推定が微妙に異なります。
また1904年と1905年にはインペリアル・エッグは製作されなかったとする資料もあり、確定することは難しいです。
ロマノフ王朝向け以外に製作されたイースター・エッグは12個あります。
ファベルジェの制作したイースター・エッグの総数は全部で62個存在します。
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